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「北九州の台所」にあるゲストハウス。 ピンチで生きた地域のつながり

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「北九州の台所」にあるゲストハウス。
ピンチで生きた地域のつながり
建築家や市民によるリノベーションプロジェクトから誕生した福岡県北九州市のゲストハウス「TangaTable(タンガテーブル)」。「北九州の台所」と呼ばれる旦過(たんが)市場の一角で、地域に根を張り、海外のリピーターも増やしてきました。そこに押し寄せたコロナショック。今、このピンチをどう乗り越えようとしているのか。そして、ゲストハウスという「場」の価値は変わっていくのか。取締役の遠矢弘毅さんにお聞きしました。

活用した支援制度

  • セーフティネット保証制度4号
  • 新型コロナウイルス感染症特別貸付
  • 持続化給付金
  • 雇用調整助成金
  • 北九州市休業要請等賃借料緊急支援金
  • (申請予定含む)

日韓関係の悪化、消費増税、そしてコロナ…


ーー宿泊業への影響は深刻だと思いますが、今どんな状況ですか?

タンガテーブルは、「北九州の台所」と呼ばれる旦過市場にあるゲストハウスです。ベッド数は67、レストランも併設しています。始まりは2014年、「リノベーションスクール」による空き物件の改修プロジェクトから生まれました。

北九州という立地柄、お客様の7割が海外の方、うち8割が韓国人です。韓国人のお客様で成り立っていたようなところもあります。それが昨秋あたりから、状況が一変します。日韓関係が悪化し、韓国人のお客様が一気に減ってしまったんです。

ただ、そのときはちょうど北九州と台湾を結ぶ航空便が就航したこともあって、台湾や香港の方々が来てくれるようになりました。それで持ち直してきたところに、今度は消費税の増税です。不安を抱えながらも、中華圏と国内に力を入れようと営業を続けていました。


空き物件を改修してオープンした「タンガテーブル」

ーーそこに追い討ちをかけるように、新型コロナが…

台湾や香港との往来も当然なくなり、国内のお客様もダメ。予約キャンセルの連続です。4月11日から、ひとまず3カ月間休業することを決めました。

業態転換も含めて、ゲストハウスのあり方を考え直す必要があるんじゃないか。コロナ以前からうっすらそんなことを考えていたので、対策の動き出しは早かったと思いますよ。すぐに助成金などの情報を調べて、3月中には実行できるように準備してきました。

ーー具体的には、どの制度を使ったんでしょう?

まずは融資、セーフティネット保証制度4号です。2月中旬、まだ正式に発表される前でしたが、市の担当者から電話で「どうやら始まるらしい。状況はどうですか?遠矢さんのところも対象になりますよね?」と、まずはヒアリングがあって。

ーー市の担当者がわざわざ電話をくれるんですか?

リノベーションスクールを始めた初期の頃から、北九州市とはずっとまちづくりを一緒にやっており、日頃から気にかけていただいていました。そういう以前からの関係性もあって、早くから情報を手に入れられたんです。

ーーでは、セーフティネット4号はすぐに申請されたんですね。

3月中旬には申請しました。初期段階で取引先の金融機関を通じてだったので、すんなりいけましたね。

そのあと、今度は日本政策金融公庫の無利子・無金利の特別貸付が出てきたので、そっちは別途申し込みをしました。これも、実は顧問税理士が創業分野では有名な人で、日本政策金融公庫ともパイプがあったのでスムーズに申請できました。

ひとまずこれで、仮に売上ゼロの状態が1年くらい続いても、家賃や人件費などを賄える見通しはつきました。

早めに検討して動き出したこと、市や金融機関、税理士たちと強いつながりがあったこと。融資では、これが非常に大きかったと思います。

ーーいろんな打ち手がある中で、融資はなぜその2つを?

その当時、一番有利な条件だったから。それに尽きますね。

今はほかにもいろんな制度が出てきてるので、もっといい条件の融資に借り換える手もあるかなと。例えば、5月に入って福岡県が実質無金利・無担保の制度を新たに発表したので、借り換えができるならそれも選択肢に入れようと思っています。

煩雑なものは後回し、まずは簡単な制度から


ーーでは、融資に関しては頭を悩ますことはなかったと?

そうですね。制度を使うところでつまづくことは特になかったです。

実はタンガテーブルとは別に、僕が代表取締役COOを務める北九州家守舎という会社がありまして、そこではとにかくいろんなまちづくりのプロジェクトを行っています。ですから、借入は僕らにとって日常茶飯事なんですよ。市や金融機関と強いつながりがあるのは、そういう経緯からでもあるんです。

ただ、スタッフをどうするか。これは頭の痛い問題です。

ーーどういうことでしょうか?

オープン時からまちを盛り上げようという思いで参加してくれたスタッフは10人います。仲間がいなくなるのは本当につらい。収入がない中の補償である雇用調整助成金の対象期間は、6月末までですよね。7月から営業を再開したとしても、どれほど予約が入るのか。そんな状況で、スタッフをどこまで雇用し続けられるかと。

本当に悩みましたが、再開時までのつなぎの事業を担う2人以外は会社都合でいったん辞めてもらいました。みんなでずっと一緒にやってきたのに、それができなくなる。とてもつらかったですけどね。

ーーその分の雇用調整助成金も申請されるんですよね。

はい、これも「もらえるはず」と踏んでますよ。

手続きが難しいとよく聞きますが、制度が発表されたばかりの頃と比べれば、ずいぶん簡素化されたと思いますけどね。僕らは早くから資料をつくってましたが、その間に申請内容が変わって、せっかく揃えたときには「それはいらなくなった」なんてこともありました(笑)

とは言いながら、実は今も資料を用意して窓口に持って行っては「ここが違った」みたいなことを繰り返していて、申請はこれからなんですけどね。それよりも、今は優先順位の高いものからどんどんやっていこうと。

ーー例えば、ほかにどんな制度を?

持続化給付金はすでに申請して、北九州市の家賃補助にも申請する予定です。先にこのあたりを終わらせた後に、腰を据えて雇用調整調整金を、という方向で動いています。


レストランも併設し、定期的にイベントも開催している。

ーーそのあたりの情報はどう収集されてるんですか?

先ほど言ったように、地域のつながりの中から知ることもありますが、借入に関しては僕が市の金融相談窓口相談員をしてるので、「今日はこんな発表があったよ」とか、最新の情報が自然と入ってくるんですよ。

ーー金融相談窓口相談員ですか?

コロナの緊急対策で、事業者がセーフティネット保証制度による融資を受ける際の認定を行う相談に乗っています。認定に必要な書類を、日々チェックしたりしてるんです。

タンガテーブルは休業してるので、ほかにも仕事を探そうと思って。市もこんな状況ですから、忙しくて窓口の相談員が足りていない。それで働くことにしました。

ーー窓口に来る事業者のみなさんは、どんなことに困っているのでしょう?

売上が減少したことをどう証明するか。ここはネックの1つになってますね。

例えば今年4月の売上について、「こんな数字でした」と単にエクセルに書き込んだデータを持ってきてもらうだけでは、なかなか証明にはなりにくい。

会計ソフトとか、あるいは伝票綴りでもいいんです。客観的に見てこれは偽造ではない、さらに過去数ヶ月にわたってしっかりとした積み上げや連続性がある。それがわかれば、認められます。

こないだも小さな飲食店の対応をしたんですが、決してきれいとはいえないノートでも、毎月の売上をしっかり書き込んでました。これならちゃんと連続性があるのでOKなんです。


遠矢さんは現在、金融相談窓口相談員の仕事もしている。

宿泊だけじゃない「場」の価値をどう高めていくか


ーータンガテーブルのこれから、あるいは次の一手。このあたりはどうお考えでしょうか。

この先どんな世の中になるかわからないし、「こうやったらうまくいく」なんてこともまったく読めない。今回の出来事で、僕たちは改めてそう実感しましたよね。

むしろ「休めるんだ」くらいの気持ちで、今までやれてなかったこと、何か可能性がありそうなこと、そういうことをフットワーク軽く試せる時期だと思うんです。

ーーこの休業期間を、進化するきっかけにしようと。

例えば、オンラインでどんなサービスができるか。これまでリアルな場で開催していた英会話カフェを、試験的にオンラインで始めています。オンラインなら、海外の常連さんたちともつながれるし、お互いに画面を通して現地の暮らしや文化を知る機会になるかもしれない。ツアーの醍醐味のようなものを、少しは伝えることができるんじゃないかと。

あと、地域産品の販売サイトも立ち上げましたし、「リアルローカル」という地域情報サイトの北九州の担当でもあるので、今まで以上に地域情報に力を入れた発信もしています。

ーーすでにいろんなことを試してるんですね。

この前の会議では、こんなアイデアも出ました。在宅勤務でストレスをためている父親と子どもに来てもらって、父親は簡単な料理をつくる、子供は宿題をする。人数限定なら、近いうちにできるかなと。宿泊だけじゃない「場」の価値をどう高めていくか、ですね。

アイデアはたくさんあるので、少しずつ試していきたいですね。それが、もしかしたら新しいサービスにつながるかもしれない。そんな思いも持ちながら。

(※写真はすべてタンガテーブルおよび遠矢さん提供)

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