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ネットでも「対面販売」で売上10倍に。 インスタ駆使した静岡のアパレルショップ

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ネットでも「対面販売」で売上10倍に。
インスタ駆使した静岡のアパレルショップ
静岡県三島市のレディースアパレルショップ「イシカワラボ」が、コロナ禍でも過去最高の売上を記録しています。店頭の売上は半分以下に落ち込んだものの、ネット販売が10倍以上に急増。好調な動きを牽引している仕掛けの1つが、インスタグラム(以下、インスタ)を使ったライブ配信です。代表の石川英章さんにお話をうかがいました。

ネットでも「対面販売」。インスタライブに全国から300人


ーーコロナ感染拡大後の営業状況はどうですか?

緊急事態宣言が発令された4月から営業時間を短縮し、お客様の感染防止のため完全予約制に切り替えました。店頭の売上は半分以下にまで減りました。

ただ、そのマイナスを補って余りある勢いでネット販売が急増しています。


(創業67年の「イシカワラボ」)

ーーそんなに一気に増えたんですか?

4月はネット販売が前年の10倍に増えました。これは店頭売上の2倍の数字です。5月以降も勢いは衰えず、会社全体で過去最高の売上を記録し続けています。

ネット販売は数年前から強化してきたんですが、それがコロナ禍で奏功したかたちですね。特に売上を押し上げた大きな要因の1つが、インスタのライブ配信です。

ーーインスタライブが牽引したんですね。

インスタグラムでの発信は数年前から力を入れ始め、DM(ダイレクトメッセージ)のやりとりを通じて販売を強化してきました。

一定の売上効果があったので「これは行ける」と手応えを感じ、今年1月にEC担当の専属スタッフを雇い、「ストアーズ」というインスタントECサービスを使ってネットショップを開設しました。

そして、コロナが流行し始めた頃からインスタライブを本格的に始めたんです。


(ネットショップのトップページ)

ーーインスタライブは具体的にどんな内容なんですか?

現在は週2回、約1時間のライブ配信を行っています。バイイング(仕入れ)を担当する妻と店頭の販売スタッフが、自らモデルとなって商品やコーディネートの説明を行い、ネットでの購買方法については私が解説しています。

これが予想以上に反響があり、30~50代を中心に北海道から沖縄まで全国から200~300人ほどのお客様にご覧いただいています。配信をきっかけに、ネットで購入されるお客様が急激に増えているんです。

ーーインスタライブ自体はアパレル各社が試してますが、なぜうまくいってるんでしょう?

1つは、ネットでも店頭と変わらない「対面販売」を意識した丁寧な接客を行っていること。これが肝になっています。

うちの強みは、お客様との距離の近い接客です。「来週、同窓会があるんだけど…」「子供の運動会にどんな服を着ていけばいいか…」。そういったご相談や会話を通じて、洋服やコーディネートをご提案しています。

単に商品を売るのではなく、なぜその洋服を着たいのか、着ることでどんな生活を送りたいのか。店内でお茶を飲みながら、じっくり話を聞いているんです。

ですから、重要なのはそれをインスタライブでどう表現するかでした。

ーーどうやって表現したんですか?

家電量販店のように機能の話はそれほどしない。そして、紹介する商品は5点ほどに絞る。むしろ妻と販売スタッフが対話しながら進めるやり方が、「人柄や個性が見える」と好評です。ときには小学生の娘が登場することもあり、場を和ませてくれています。

「一人で配信するよりも、みんなで仲良く見せた方が店に行ってみたいと思いやすくなる」というスタッフのアドバイスも参考に、アットホームな雰囲気づくりにこだわりました。

「どのサイズがいいか?」「その生地は洗濯できる?」などと、配信中にお客様からリアルタイムで投稿いただくコメントも読み上げ、妻とスタッフがその場で丁寧に答えながら進めていきます。物理的な距離は離れていますが、お客様にとっては店頭の対面接客と同じようなやりとりができるんです。


(11/23に配信したインスタライブの一コマ)

ライブ配信を終えた後も大事です。購入に関する個別の問い合わせにはすぐにレスポンスします。当たり前のことですが、こうした素早い対応をお客様が評価してくれているのだと思います。

ただ、インスタライブはあくまで1つの「戦術」です。それ以上に大事なのは、むしろ目に見えない「戦略」なんです。

過去の倒産危機、「おばちゃんブティック」からの変貌


ーー「大事なのは戦略」とは、どういうことですか?

インスタやネット販売は、決して思いつきで始めたわけではありません。導入の経緯をお伝えする前に、少しこの店の歴史を紹介させてください。

私が家業であるこの店に入社したのは2011年。店の売上はバブル崩壊以降ずっと右肩下がりで、入社当時は倒産寸前の状態でした。しかし、私が代表に就任した2013年以降、改革を進めてきました。


(店内の様子)

ーーどんな改革を進めてきたんですか?

例えば、客層の明確化です。従来は70代が中心の「おばちゃんブティック」でしたが、これを「年収1000万円以上の富裕層」「(ファッション雑誌の)『VERY』『STORY』世代の30〜50代」として、ポジショニングを明確に設定しました。

そして、誰でもウェルカムの営業ではなく、理想のお客様と長くお付き合いいただくスタイルに変えたんです。

並行して屋号の変更や店舗の全面改装なども行いました。すると翌年から売上減に歯止めがかかり、それ以降は右肩上がりで伸長しています。

そうした改革の延長に、今回のインスタを中心とするネット販売の強化があるんです。

ーーどういうことでしょう?

少子高齢化や地方の疲弊を考えると、長期的に見て三島市や静岡県を中心とするマーケットだけでは存続は厳しくなっていくはずです。そこで、ネット販売です。

全国に商圏を広げるために、数年前からフェイスブックやインスタグラムなどを使って情報発信とネット販売に力を入れてきました。その積み重ねが、今回のコロナ禍という特殊環境下でブレークスルーし、商圏の拡大と売上の急増につながったんです。

前期(2020年8月期)の売上は、1億3000万円ほどで過去最高に達しました。私が入社したときと比べると約4倍です。スタッフもパートを含め6人に増え、今期(2021年8月期)の売上は3億円近くに跳ね上がるのではないかと予想しています。


(インスタグラムのトップページ)

店頭はリピーター向け完全予約制に。日曜定休も


ーーコロナの影響を受けて、経営に対する考え方などに変化はありましたか?

常に新しいことにチャレンジし続けることが大事、チャレンジしないことがリスクなんだ。改めてそう思い知らされましたね。

何度も言いますが、今こうして私もスタッフも安心して生活を送れているのは、数年前からネット販売の種まきをしてきたからです。もし店頭の売上しかなかったら、今頃経営は相当厳しかったはずです。

ただ、単に行動すればいいわけでもありません。大事なのは戦略、つまり狙いを持って行動することです。そうすれば失敗から学び、次の一手が打ちやすくなります。

ーーどんな店にしていきたいか、今後の構想があれば教えてください。

ネット販売には引き続き力を入れながら、さらに上位顧客が増えるような施策を打っていきます。

店頭はコロナに関係なく、来年から完全予約制にするつもりです。そこで上位顧客のリピーターさんを迎え入れつつ、ネット販売で商圏をもっと広げていく。この両軸で将来的には売上10億円を目指したいと思っています。

同時に、労働環境を整えて社員の福利厚生も充実させていきたいですね。コロナ禍の縮小営業を受け、現在は定休日を平日に2日間つくり、第3日曜も休みにしています。これはアパレル業界では異例の多さですが、今後は平日と日曜の週休2日制にできないか検討しています。

家庭を持つスタッフもいるので、社員が仕事も生活も充実した人生を送れるように。そういう会社をつくっていきたいですね。

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