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トップダウンで構造改革。 コロナでも利益出す飲食店の「理念経営」

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トップダウンで構造改革。
コロナでも利益出す飲食店の「理念経営」
新潟を美食の街にーー。そんな思いで地元の食材にこだわった居酒屋やカフェ、グローサリーなどの飲食店を県内で7店経営するSUZU GROUP(有限会社寿々瀧、長岡市)。コロナショックで一時は売上が7割減少しましたが、収益構造をゼロから見直し、5月は一転して利益を出すところまで巻き返しています。代表の鈴木将(しょう)さんに話をうかがいました。

活用した支援制度

  • 雇用調整助成金(申請予定)
  • 持続化給付金(申請予定)
  • 新潟市テナント等家賃減額協力金事業(申請予定)

「のり弁シリーズ」がヒット。3年分の商品を2カ月で開発


ーー新潟県内で7店舗経営されてますが、コロナの影響はやはり大きかったですか。

新潟駅前の2店舗は3月時点で早々に休業し、長岡市の居酒屋も一時的に閉店しました。同時にテイクアウト専門や食品店に業態変更しました。

それでも、グループ全体の売上は3月が5割減、4月が7割減。最初は八方塞がりの状態で、「これは一瞬でつぶれるな」と思いましたね。

やれることは全部やる。そんな気持ちで必死にもがいてきました。そんな日々の中で、少しずつですが手応えを感じられることも増えてきました。

ーー例えばどんなことにでしょうか。

まずは、テイクアウトの弁当販売です。団体客向けの弁当を販売していた「SUZU365」では、注文のキャンセルが相次いだため4月から個人客向けに切り替えました。

以前は1000〜2000円の弁当が主力でしたが、自粛ムードですし、仕事や所得が減った人が増えています。それでメニュー内容を見直し、価格帯を手頃な700〜800円に下げました。

3月初旬に販売した一発目は、「のり弁シリーズ」。これが口コミで広がり、ヒットメニューになりました。5月は3000個くらい売れましたね。

ーー弁当はスーパーでの卸販売も始めたようですね。

そうなんです。地元の大手スーパー「原信(はらしん)」で5月にスタートしました。

外出自粛が続く中で、スーパーの利用が増えてますよね。それでバイヤーさんからお声がけいただいたんです。

僕らを含めて地元飲食店のテイクアウトを応援する催事販売も企画していただき、ゴールデンウィークだけで1000個以上売れるなど反響をいただいています。


(ヒット中の「のり弁シリーズ」)


(スーパーでの卸販売も好調だ)

ーーそういったアクションの意思決定はどうされたんですか。

一気にトップダウンに変えましたね。「明日からこれでやる」と、とにかくスピード重視で決断するようにしました。

弁当以外にも、食品の瓶詰めやカレーのレトルト、パスタソースなど3~4月に開発したメニューは30以上あります。3年分くらいの新商品を一気に出した感じです。

スーパーのバイヤーさんから弁当販売の話をいただいたときも、いち早く手を挙げ、数回の打ち合わせを経ておそらく一番早くに販売を開始しました。

今日思いついたら、翌日には実行する。それくらいの気持ちで、とにかくいろんなことをスピーディーに判断しました。


(新たに開発したパスタソース「新潟ナポリタン」)

飲食店から、飲食サービスへ。事業構造からリストラクチャリング


ーー従業員がたくさんいらっしゃる中で決断を迫られる難しさもあったと思います。

これから店舗単体で売上を伸ばすのが難しくなります。その中でどうやって収益を上げていくか。一度すべてリセットして考えました。

飲食店はFLコスト(食材原価と人件費)が非常に大きい。まずは、それを各店がしっかりつかんで、会社としても全体を把握できる状態をつくる。そうすれば、売上にコミットできるし、攻め方も随分変わってきます。

人件費はかなり絞りました。4月の人件費はアルバイトを含めて雇用調整助成金を使うことにしましたが、5月からは正社員だけに残ってもらうことにしました。

アルバイトには本当に申し訳ない気持ちでしたが、給料が少し減る状態が中途半端にしばらく続くようなら、先に別の仕事を探してもらったほうがいいと思って。

弁当を個人客向けに切り替えたことで店舗のオペレーションもガラッと変わりましたし、スーパーでの卸販売が増えることで利益構造も変わります。

そのあたりを一度すべて組み直して、しっかりと利益を生み出せるような仕組みをつくる。仕切り直してそこからもう1回登っていくぞ、という思いでしたね。

ーー会社の体質、事業構造を大きく変えたと。

それと、考え方もです。もう僕らは飲食店ではなくて「飲食サービス」事業者だと。そうやってわかりやすい言葉に置き換えたり、判断軸をつくることで、打ち手が明確になり動きやすくなりました。

ーーそれはいつ頃、どういうきっかけで考え出したんですか。

3〜4月で「ここまで落ちるか」というところまで落ちたとき、改めて僕らがやりたかったことは何なのか考えたんです。僕らの理念は、飲食店を通して地域の食の豊かさや魅力を伝えていくこと。「地域循環型」と言っています。

ーーどういうことでしょうか。

地元の安心安全な食材を使って、その料理を地元の人たちが味わう。さらに新潟の食をブランド化し、国内外から観光客もやってくる。僕らが目指しているのは、新潟をそんな美食の街にすることです。

今回弁当の価格を下げたときも、地元の食材をちゃんと使いながら、お客様も気軽に購入できるギリギリのラインで価格設定しました。顔なじみの農家さんと「一緒に売っていきましょう」と協力しながら、弁当を販売してるんです。

ーー生産者と一緒に考えてるんですね。そうして地域全体の魅力を形にし、伝えていくと。

そして地域の食の魅力を伝えるには、果たして飲食店というリアルの場がないとできないのか?ということも考え、オンラインのサービスも始めました。

ーーオンラインのサービスですか。

4月から新潟の食材や僕らの商品を使ったレシピを紹介するYouTubeチャンネル「SUZU LIFE kitchen」や名物スタッフ、通称くぼケンが新潟のお酒を紹介したりする「くぼケンのカオス酒場」というチャンネルを開設しました。

やってみて気づいたのは、オンラインでは一気にターゲットの幅が広がる可能性があるということ。今までは地域の人たちや観光客が中心でしたが、大袈裟に言えば世界中の人とつながれるわけです。

コロナが落ち着いたとき、きっとリアルな場所の価値は相当高まると思います。すぐに売上回復が見込めなくても、それを見越して種まきをしておく。そうすることで、もしかしたら客単価が倍くらいになるかもしれませんからね。

ーーそうした種まきの成果が、すでに少しずつ生まれているようですね。

弁当は「のり弁シリーズ」がヒットしましたが、「SUZU365」は来店客が2倍以上に増え、売上も4月は前年と比べて1割減にとどまり、5月は2.8倍にまで増加しました。

卸販売もスーパーの原信さん以外にもいろんなところからお声がけいただき、弁当だけでなく加工品の販売も始まっていて、売上全体の1割ほどになろうとしています。

当初は売上減を少しでも補うためと思ってたんですが、SNSなどでお客様の反応がすごくよくて驚きました。多くの人にお店のことを知っていただくきっかけになっています。

そんなこんなで、とにかくこの数カ月はノンストップで突っ走ってきました。収益構造も大胆に見直したわけですが、その結果5月は利益を出すことができました。

店舗存続へ、クラウドファンディングで200万円調達


ーー支援制度についてもお聞きしたいのですが。

メインで考えているは、雇用調整助成金です。それと、持続化給付金と休業店舗の家賃補助あたりですね。家賃補助は国と新潟市でそれぞれあるので、それ以外の制度も含めて調べながら、これから申請しようと思っています。

それとは別に、休業した新潟駅前店舗の存続のために4月にクラウドファンディングを実施したんです。目標は100万円でしたが、結果はそれを上回る205万円に。とてもありがたいことです。

一方で、支援はマイナスをカバーする守備的な要素も強いので、それに依存してしまうような状態は避けないといけない、とも思っています。


(クラウドファンディングでは200万円を超える支援が集まった)

ーー短期と中長期、守りと攻め。それぞれ別に考えるべきと。

そもそも飲食店として完全復活できるのか。仮にコロナが落ち着いたとしても、ソーシャルディスタンスを保つとなると席効率が悪くなるし、そもそも意外とこの暮らしにみんなが少しずつ慣れてきている面もあると思うんです。そうなると、どうしても飲み会の回数は減っていくでしょう。

そんなことも考えながら、僕らは収益構造を一度リセットすることにしたわけです。5月はひとまず結果を残せました。これが正解かどうかは、これから証明していくことになります。

5月下旬からは徐々に各店の営業が再開しています。6〜7月の結果をしっかり見つめながら、今後もその時々でしっかり判断していこうと思っています。

飲食店のあり方を、地方から変えていきたい


ーー「コロナ後は、リアルな場の価値が高まる」とおっしゃってましたね。今後のリアルの価値をどう見ていますか。

外食の世界で言えば、「ここにしかないものを食べに行きたい」「あの店の料理が食べたい」「この人から食材を買いたい」、そういう価値観がこれまで以上に広がっていくと思うんです。

僕らはコロナ以前から地元の食材を大事にしてきたし、生産地を訪れるフードツーリズムなどにも取り組んできました。長い時間をかけて地道に生産者やお客様とつながりながら、「地域循環型」を掲げて新潟の食の魅力を発信してきたんです。

リアルな場の価値が見直されて、それを求めるニーズがさらに高まってくれば、地域に根付いてやってきた活動の成果が一気にやってくるんじゃないかと期待しています。

ーーコンセプトや理念など、本質的な価値がより問われる世界になるだろうと。

どういう思いでやっているのか、その生き様や人間性がより問われるようになっていくんじゃないでしょうか。

僕らは、自分たちの会社を残していくことだけじゃなく、飲食店自体の考え方を地方から変えていきたい。食を通して、地域の価値を高める、地域に利益を還元する。

まずは僕らがちゃんと地域に愛されて、そのロールモデルになる。それをほかの店にどんどん真似してもらって、この土地がおもしろくなっていって、次世代へ受け継がれていく。そのためにも、この危機を乗り越えてしっかり生き残っていかないといけません。

高校を卒業してそのまま料理の道へ進み、今年で40歳になりました。大好きな飲食業は大きな曲がり角を迎えてますが、僕はこれからも食の力を信じ続けます。

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