ザ・ピンチヒッター
ザ・ピンチヒッター

あなたのエリアの対新型コロナウイルス支援制度がわかる、見つかる!

小規模企業の経営ピンチを救う総合情報サイト

過去の災害データを基に即断即決。 佰食屋はこうしてコロナに向き合った

  • 京都府
  • 京都市
  • 飲食
トップ > 事例 > 過去の災害データを基に即断即決。 佰食屋はこうしてコロナに向き合った
過去の災害データを基に即断即決。
佰食屋はこうしてコロナに向き合った
1日に100食しか売らない、全員18時退社、著書のタイトルは『売上を減らそう』。ユニークな経営手法で知られる「佰食屋」は、コロナショックにどのように立ち向かっているのでしょう。行政支援の活用やテイクアウト、また今後を見据えた経営について、代表の中村朱美さんにお話を聞きました。

活用した支援制度

  • 持続化給付金
  • 雇用調整助成金(申請待機中)
  • 小学校休業等対応助成金

河原町が死んでいく…


ーー今日はお時間をありがとうございます。

ちょうど子どもたちが保育園に行ってすぐの時間なので大丈夫です。今日はよろしくお願いいたします。

ーー京都で4店舗経営されていますが、コロナの影響は大変と思います。

実は3月いっぱいまでは、まったく影響がなかったんです。4店舗になってではじめての春休み、うちは大学生のお客さんも多くて。

でも、3月30日にすべてが一変しました。

3月29日に京都産業大学におけるクラスター発生と、志村けんさんの訃報が重なったんです。肌で「これはやばいな…」と感じました。

ーーそこからの影響は…?

まず内部的には、おばあちゃんズと呼んでいる高齢のスタッフの出勤をやめました。また、他の従業員にも心配なら休んでいいよ伝えました。

お客さまも、次の日からガクンと減りました。まさに半減です。その週末の様子をみて判断と思っていましたが、見事に右肩下がり。50%、30%と減っていき、「河原町が死んでいく」と思いました。

緊急事態はトップダウンで意思決定


ーーそして4月7日に緊急事態宣言が発令されました。

発令された以上、簡単に取り下げることは難しいと思っていましたから、即座に休業を判断しました。1店舗のみテイクアウトの形で営業を継続し、3店舗を閉じることにしました。

ーー当日にはFacebookで投稿もされてましたね。とても重い決断をどうやってスピーディに決断されたのでしょうか。

緊急事態はトップダウンで決めます。まわりに意見も求めず、「私が責任をとります」と。

今回で言うと、西院のステーキ丼の店舗のみをテイクアウトで残しました。普段から3割くらいがテイクアウトでニーズが高かったので、この店舗ならテイクアウトだけに切り替えてもいけるという読みでした。



ーー投稿には「飲食店は一度立ち止まると復帰への道のりはいばらの道」「走り続けないと倒れてしまう。悔しくて涙も出ました」との記載もありました。

3店舗の休業は本当に苦渋の決断でした。ご来店いただけるお客さまは本当に嬉しかったけれど、感染拡大のリスクがあったので。

1店舗のみにしたのは、戦力の選択と集中の考えもありました。大変な状況で複数店舗無理に頑張って過労になっては従業員を守れません。テイクアウトメニューも、人気だったハンバーグもやめてステーキ丼1本にしぼって。


(西院で人気の国産牛ステーキ丼)

ーーそこも即断ですよね?

はい。感覚では決めません。統計から導き出します。周りからは「中身は男」と言われたりもしますね(笑)。

これまで、ランチはメニューごとに何がいくつ売れて、テイクアウト率はどれくらいで、販売に対してのシフトは何人で、というデータをすべて取って蓄積してきています。今回は2年前の西日本豪雨や台風21号直撃の際のデータも役立ちました。

メニューに関しては、1つに絞ることでオペレーション負荷を減らすとともに、お客さまのことも考えました。飽きがきたタイミングでハンバーグを再開したら喜んでまた来ていただけるかもしれない、と。

手当たり次第にやってはいけないと思っています。5月には休業していた一部店舗の再開、6月には店内飲食も再開、といった形で出口戦略も見据えての決断でした。

ーーデータがあることが、そういった戦略含めたスピーディーな決断のベースになるんですね。

そうです。統計と科学です。データから売上予測や必要シフト人数などを出しつつ、働く側にも無理のない形での計画をつくりました。

もちろん、検証は必要です。統計をとってすぐ修正をする。今回も通常1ヶ月ごとのシフト作成のところ、10日ごとにつくるという変更をみんなにお願いしました。

小難しい行政書類は「大丈夫です、日本語です。」


ーー行政支援の活用についてもうかがいたいです。申請の体験談も発信されていました。

もともと厚生労働省の「キャリアアップ助成金」なども活用していて、比較的こうした申請は得意だったので、初めての方のお役に立てるのではと思いまして。

コロナの関連では、これまで政策金融公庫の特別貸付、雇用調整助成金、持続化給付金、小学校休業等対応助成金に申請をしました。

ーー制度情報の収集はどのようなことをされていますか?

難しいことは何もやっていません。大手のニュースサイトなどが基本で、たまにSNSの情報といった感じです。Twitterはアカウントももっていません。

ただし、とても大切と思っているのは、必ず大元の行政のホームページを見ることです。解説の記事とかがまわってきても、更新があったり間違っていることもあるかもしれませんから。

ーー行政のページは分かりづらいという方も多いですが…

最初は小難しく見えますが、こうお伝えしてます。「大丈夫です、日本語です」。

知らない言葉がでてきても、辞書をひくように一つひとつ検索していけばちゃんと説明があります。電話で問い合わせたことはほぼありません。

書類の書き方についても、雛形がどこかに絶対あるんです。画像検索もよく使いますがとても便利ですね。

そもそも焦ってる状態ですし、行政書類は難しいという既成概念があるからハードルがあがってるのは分かりますが、「大丈夫です」と私は言い切れます。

ーーそれは力強いお言葉です。

たとえば持続化給付金なんて、ほんと簡単ですよ。ネットで終わるし、書類も基本的なものだけです。

ーーただ、今回事実上の休業補償となる雇用調整助成金は難解ではなかったでしょうか。おりるか分からなくて不安という声もあります。

他より書類が多いというのはありますが、私は100%おりると信じてます。不安なのは恐らくこうした申請にチャレンジしたことが無い人なんじゃないでしょうか。

条件にあっていて、書類が揃っていれば、おりるはずなんです。だからスタッフの休業も即断できました。


(雇用調整助成金で用意した書類)

ーーそもそも書類を持っていない、という方はどうでしょうか?

程度問題は当然ありますが、そこで諦める必要ないと思います。このタイミングでつくれるものもあります。

たとえば出勤履歴なども手書きのシフトなりをエクセルで整えるだけで良かったりすると思います。エクセルができなくても、若いバイトの人ができるかもしれません。

ちゃんと分かればいいんです。不安だったら今は混み合ってるところはあると思いますが、問い合わせればいい。

とにかく、ちゃんとやれば絶対おりると信じて、面倒でも書類と向き合ってもらいたいと思います。

ピンチをチャンスに変えるには


ーーこのコロナショックに多くの飲食店の方、経営者が悩んでいると思います。

2年前の西日本豪雨と台風21号直撃を体験したことによって、私はピンチはチャンスになりえると思っていました。今回もこの自粛要請の期間に強くなれる、従業員が成長するタイミングだ、そう考えました。

だからめちゃくちゃ従業員の研修をやったんです。はやく肉をさばく、新しいメニューの調理をやってみる、他店舗へのヘルプに入れるようにする、などなど。組織力は間違いなく強くなりました。

ーーそれは素晴らしいですね。

佰食屋は利益率が3%くらいの会社なんですが、いま新たに目標として10%にあげることを掲げています。労働時間は既に45分短縮しています。つまり、従業員が成長することで、利益率、生産性、働き方改革、この3つを同時に実現できるんです。

ーー「とは言っても…」という方も多そうです。

分かります。飲食業では、オーナーシェフのようにプレイヤーでもある経営者が多いので。

でもこういう時こそ、自分がいないと店がまわらない状況から、いなくてもまわるための仕組みづくりをすべきです。お店の営業以外のことにも取り組む時間をつくることが、店を維持、従業員を守るためにとても大切だと思います。

ーー「自分が顔だから」みたいな方もいると思いますが…

「気のせいです」とお伝えしています(笑)。もちろん、佰食屋でも私に会いにきてくださる方もいらっしゃいますが、従業員には「今日は出張にでています」「今日は◯◯店にいます」とちゃんとお伝えするようにお願いしています。私自身もSNSでいつどの店舗に出勤するかを発信することもあります。

大切なのは、裁量権をちゃんと現場に渡すことです。特に、トラブルの時の判断が一番重要です。

例えばお客さまの服を汚してしまった時に「オーナーに確認します」となるのと「クリーニング代をお渡しします」と即座に言えるのとでまったく変わりますよね。様々な事態を想定して、現場で判断できる裁量を細かく決めておくとスムーズになると思います。

これからの生き残りに必要なこと


ーー休業とテイクアウト営業への切り替え後はいかがですか?

ありがたいことに、想像を超えるほどの反響をいただいて、ずっと100食完売が続いています。ウーバーイーツもネットでの注文受付も一切やらず、電話予約のみでです。

ここは一日の長があったところではあります。西院のお店は年間3万人にご利用いただいていますが、テイクアウト率が30%だったので1万人近く。それを7年間続けてきたので。

ーー緊急事態宣言が解除されたとしても、これから飲食店にとって厳しい時期が来るとも言われています

皆さん自宅で飲まれる機会が増えています。安く飲めて「意外と自宅っていいよね」って思ってる方も多いと思います。言われている通り、コロナ前に戻れない人も多いでしょう。

大箱の居酒屋のような、飲み会需要に応えていたお店は特に厳しくなると思います。あと、佰食屋でも地元密着型の強さを痛感した一方で、繁華街のリスクも明確になりました。土地にもよりますが観光による振れ幅がとても大きい。インバウンドは1年2年は戻ってこない前提で考えなくてはいけないと考えています。

厳しいですが、業態変更すら検討するタイミングだと思います。

ーー佰食屋ではいかがでしょうか?

始めた7年半前、定食屋を始めると言ったら「なんで今更定食屋?」とまわりにはバカにされました。でも私は、中食が普及していく中、家飲みも増えて居酒屋は難しくなるだろうと思っていました。景気がいいときはどんな店でもうまくいきます。景気が悪いときには嗜好品から削られますが、一番淘汰されないのはお昼ご飯だろうと。

店舗の完全再開は、京都市の小学校の休校が解除されたタイミングに合わせて行う予定です。景気が悪い時、もしくはコロナの後でも、「外食したい」というニーズは残りますよね。そこでご馳走だと思えるものをランチに1000円で提供する。この価値は変わらないと信じています。

ーー悩んでいる飲食店の経営者の皆さんも多いと思いますが、どこから始めればよいでしょうか?

すべては、自分を知るところからだと思います。

売上や利益、人件費といった数字もそうですし、従業員の誰がどんな仕事をしていて、どんなスキルを持っているのか。「この人が休んだら終わりやん!」みたいなことを把握していない経営者がとても多い気がするんです。

お店の状態を徹底的に理解しないと、改革は絶対にできません。佰食屋では以前、1日の時間の使い方をフローチャートにして、全員に提出してもらったこともあります。すべての情報を知るところが、危機感や希望や、心を動かすきっかけになるんです。

ーー焦って手を打つのではなく、急がば回れと。

いきなり新しいことをやると、従業員は疲弊します。必ずトレードオフが発生すると考え、新しいことをやるなら既存の何かを減らしてあげる。そのためにも現状を理解して、整理してあげることが必要です。そこから戦略を考えることにつながっていきます。

ーー現状把握も、まさにデータのお話ですね。

面白いもので、いろんな人が自分の意思でメニューを選んでいるはずなのですが、統計で見るとすべて同じ傾向になるんですよね。うちで言うとステーキ丼、おろしポン酢ステーキ定食、ハンバーグ定食がありますが、データで見ると毎月のオーダー割合はほとんど一緒です。

これをいい機会にして、今からでも遅く無いからデータをとり始めるのはどうでしょうか。簡単でも、できるところからでも問題ないです。そこから何かが変わっていくと思っています。

ーーありがとうございます。最後に、飲食経営者の方々へ何かございましたら、教えていただけますか?

1人親方みたいな方も多いと思います。飲食業界は、つながりがあるようで無かったりするので、1人で悩んで孤独な人も多い気がします。そうした方に、カッコ悪いかもしれませんが、弱音でもなんでも声をあげてみてはどうでしょうか?と思ってます。

SNSでもなんでも、声をあげたら反応がきたり、誰かが教えてくれたりします。声に出すだけで楽になることもあるかもしれません。大変な時期ですが、皆で助け合って乗り越えていきたいですね。

トップ > 事例 > 過去の災害データを基に即断即決。 佰食屋はこうしてコロナに向き合った