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きっかけはメルカリだった。 社員15人の町工場、初のBtoC商品に挑む

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きっかけはメルカリだった。
社員15人の町工場、初のBtoC商品に挑む
コロナをきっかけに生まれた感染予防アイテム「サワランドウ」が、通販や大手量販店で話題にーー。開発したのは、自動車や半導体製造装置などの金属部品加工を手がけるJ・P・F(京都市)。創業以来初となるBtoC商品はどうして生まれたのか。田中丈治社長にお話をうかがいました。

活用した支援制度

  • 雇用調整助成金
  • 持続化給付金
  • 中小企業等新型コロナウイルス対策緊急支援補助金
  • 新型コロナウイルス対策企業等緊急応援(企業グル-プ支援「助け合いの輪」推進)事業補助金

ヒントは海外製品、楽天やドンキで8000個販売


ーーコロナの影響はどうですか?

自動車や半導体などの製造装置に使われる金属部品を製造・加工してるんですが、昨春以降、米中の貿易摩擦の影響で売上がガクンと落ちました。ようやく持ち直しの兆しが見え始めてきた矢先のコロナです。ダブルパンチですよ。どの部品も受注が落ち込み、売上はさらに減りました。

このままではまずい。従業員14人、誰もがそう危機感を抱いたはずです。

ーー起死回生の一手として、「サワランドウ」の開発に乗り出したわけですね。

「サワランドウ」(税込1980円)は、これ1つあれば直接触らずにドアを開けたり、エレベーターのボタンを押したり、電車のつり革をつかんだり、ATMのタッチパネルを操作したりと、いろんなシーンで感染予防に使えます。


(J・P・Fが開発した「サワランドウ」)

4月に商品化して、まずはフリマアプリの「メルカリ」でテスト販売し、5月末から通販サイト「楽天市場」や大手量販店「ドン・キホーテ」で売り出しました。現在までに約8000個売れています。

正直もう少し売れてほしかった、というのが本音ですが、それでも私たちにとって初めての一般消費者に向けたBtoC商品です。社員もやりがいを感じてくれて、会社としても新しい可能性を見出すことができました。

ーーそもそも、商品開発のアイデアはどこから生まれたんですか?

ドアノブに触らず開けられる、アメリカ製のドアオープナーの存在を知ったのがきっかけです。私は、海外輸出に熱心な府内の中小製造業者を中心に構成する京都自動設備支援ネットワーク協議会(通称:チーム京都)の会長を務めてるんですが、その団体を通じて海外の情報がけっこう入ってくるんですよ。

それでドアオープナーを知って、「これならうちでもつくれる」と、まずは社員に配布しようと試しに製造してみたんです。電車やバスで通勤する社員がいるので、これがあればつり革に触れずに済みますから。最初は社員の感染予防が目的でした。

ーー社員の反応はどうでしたか?

実はこれが、最初は芳しくなくて。喜んでくれた人は一部で、「また社長が変なこと言ってるぞ」と半信半疑の人が多かったように思います。

でも、あることをきっかけに「これが売れるのか」と一気に火がついたんです。

ーー何があったんですか?

不動産で働いている私の友人が「サワランドウ」を気に入ってくれて、「これ、お客さんに配るわ」と大量に購入してくれたんです。そこからですね、社員は目の色を変えてどんどん仕事に打ち込んでくれるようになりました。

ーーとはいえ、一般販売は全くの未経験ですよね。どうやって販売先を見つけたんですか?

これも身近なつながりからでした。弟の友人がECサイトなどを運営しておりまして、その伝手を辿って販路を探し出しました。

それでまずは「楽天市場」、それから「ドン・キホーテ」でも東京・大阪・愛知の計10店で販売することができたんです。


(京都自動設備支援ネットワーク協議会のメンバーで出展した中国・上海の商談会)

IT生かして独自の生産体制、BtoCの新サービスも


ーー開発・製造過程で苦労したことはありましたか?

最大の問題は量産化でした。素材は殺菌作用のある銅を使用してるんですが、すぐに変色してしまう難点がありました。1個2個つくるのは比較的簡単ですが、品質を維持しながら量産化する。これがなかなか大変でした。

ーーどう克服したんでしょうか?

とにかく、手間暇かけたのが一番大きいですね。銅は製造過程で油が付着した状態を少しでも放置すると、すぐに変色してしまいます。ですから、置きっぱなしにせずに常に製品を拭き続ける必要がありました。

第一工程が終わったら、なるべく時間をかけずにすぐに第二工程へ。そうやって各工程の間にも人を追加配置して、流れを一切途絶えさせずに1個ずつ丁寧に拭きながら、変色していないかどうかを確認する。かなり手間がかかるんですが、この作業を徹底してやりました。

試行錯誤の日々でしたが、5月のゴールデンウィークも社員が休みなしでがんばってくれたおかげで、量産体制を整えることができたんです。


(ゴールデンウィークも休まず営業し、量産体制を整えた)

ーーすごいスピード感ですね。

フットワークの軽さは私たちの強みです。うちのような小さな町工場には古臭いイメージがあるかもしれませんが、私たちは社内システムのIT化を積極的に進めています。

注文状況や納期管理、売上利益のほか、社員の出勤管理もシステム上で一目でわかるようにしてるんです。どうすれば「サワランドウ」の製造作業を効率的に進められるか。注文状況や社員の稼働状況を見ながら、瞬時に独自の生産体制を整えました。

ーー社内の一体感が伝わってきます。

自分たちのつくったものが消費者の手に渡り、みなさんの喜ぶ顔が浮かぶ。社員みんながそんな実感を得られたことは非常に大きいことです。

今まではどこにどう使われているのか、なかなか実感が湧かず、黙々とつくっているだけのようなところもありましたから。それが今は、「こんな風に役立っている」とリアルに感じられるようになりました。

こんなこともありました。ある旅館が、コロナ対策の一環で「サワランドウ」を宿泊客に無料で貸し出していることを知ったんです。私たちの商品が、いろんな場所で役に立っている。ものづくりに関わる人間として、これ以上の喜びはありません。社員の意識も随分と変わってきているように思います。

今回、BtoCのビジネスが社員の大きな喜びにつながることがわかったので、これからそうした仕事も増やせないか考えているところです。

ーーどういうことでしょうか?

個人の方にも、私たちの加工サービスを提供できないかと。今、DIYで内装や家具をつくる人が増えてますよね。でも、自分でやるにはちょっと難しい作業もあるでしょう。そんなとき、気軽に業者に頼めたら助かりませんか?そういう作業を私たちが請け負うのです。

オンライン上で注文を受け付けるシステムをつくれないか検討していて、近い将来に実現させたいと思っています。


(注文状況や納期などは独自のシステムで一元管理している)

アフターコロナを見据えた組織のスリム化


ーー売上は徐々に回復傾向にあるんでしょうか?

製造業全体としては少しずつ持ち直しの動きも出てきていると聞きますが、私たちのような末端の製造現場にはまだ好転の兆しは見えてきていません。

今私たちが力を入れているのは、既存のお客様をしっかり守ること。それと並行して、アフターコロナを見据えて社内改革を進めているところです。

ーーどんな社内改革ですか?

無駄な業務を見直して、組織のスリム化を図っています。

今はコロナ禍の緊急事態ですが、こういう危機的な状況でもちゃんと生きていける体制を整えておけば、もし次に何か大惨事が起きても怖くないじゃないですか。今のうちから危機に備えて強い経営体質をつくっておく必要があります。

例えば、事務所の管理業務。非効率な作業は見直して、その分空いたリソースを製造現場に投入するようにしています。品質向上や新規事業にもっと集中するためです。

アフターコロナやその先に向けて、どんなことがあっても生き残れる会社になるために、これからさらに技術を磨き、経営体質も強化していきます。

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