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FacebookやUber Eatsと連携。 神戸市はなぜ全国初の独自政策を連発できるのか

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FacebookやUber Eatsと連携。
神戸市はなぜ全国初の独自政策を連発できるのか
コロナで苦しむ飲食店に、宅配サービスのUber Eatsをはじめ「全国初」の支援策を集中投下した神戸市。過去にはFacebookとの連携で周囲を驚かせたことも。先進的な施策はどのようして生まれたのでしょうか。旗振り役の長井伸晃さん(企画調整局つなぐラボ特命係長)にお話をうかがいました。

【プロフィール】長井伸晃(ながいのぶあき)
神戸市企画調整局つなぐラボ特命係長。FacebookやUber Eatsなど13企業との事業連携を実現。神戸大学非常勤講師やNPO法人Unknown Kobe理事長のほか、クロスメディアイベント「078KOBE」や「TEDxKobe」、全国の公務員コミュニティ「よんなな会」などの運営にも携わる。「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2019」受賞。

Uber Eatsとの連携はなぜ2週間で実現できたのか


ーーまずは、飲食店を中心にコロナの影響をお聞きしたいのですが。

神戸には歴史のある中小企業や小売店がたくさんあって、まちの文化を支える大事な存在です。飲食店も同じく大切な存在。ただ、コロナの影響で少しずつ閉店するようになってきて、支援は待ったなしの状況でした。

「飲食店支援策をどんどん考えてほしい」。市長や副市長からそう言われ、具体策を考えました。

その第一弾が、Uber Eats(ウーバーイーツ)との連携です。その後も追加支援をどんどん発表していきました。

ーーUber Eatsとの連携はどういう経緯で生まれたんですか?

私は在籍するつなぐラボで、以前からシェアリングエコノミーを活用した課題解決や新たな市民サービスの創出に取り組んできました。

つなぐラボとは、行政の縦割りを解消して関係部署や官民をつなぎ、連携強化を進めることで、骨太の政策を市民に届ける目的で立ち上げられた新しい部署です。

実は、Uber Eatsとの連携もその取り組みの一環としてコロナ前から検討していて、すでに先方とコンタクトをとってたんです。

そんなときに起こったコロナ危機。ある日、副市長からLINE(ライン)で「長井くん、Uber Eatsとやりとりしてたよね。あの仕組みを使って飲食店支援ができないかな?」と言われて。

翌日すぐにUber側とオンラインで会議して、2週間後には記者会見を開きました。


(Uber Eatとの支援策の概要。詳細はプレスリリースを参照)

一方で、Uber Eatsは市内全域をカバーしきれないなど、それだけでは十分な支援にはなりません。そこから、追加支援を打っていくことになります。

ーーエリアが限定されるという公平性の問題は、行政が直面する大きな課題の1つだと思いますが。

それに関しては、かなり内部でも議論しました。それでも踏み込めたのは、「三方よし」のロジックにたどりついたことが大きいです。飲食店と就労者、家庭。この三者すべてに価値を出せる企画をつくり上げたんです。

ーー「三方よし」ですか。

コロナショックの影響を受けたのは、飲食店だけではありません。休業により仕事を失った就業者も多いし、ステイホームや学校の休校により家庭では家事の負担が大きくなっていました。

Uber Eatsとの連携で飲食店の売上を支援しつつ、配達員としての雇用を生み出し、食事オプションを増やすことで家事負担を減らす。これが「三方よし」として期待できる効果です。

圧倒的なROI(投資対効果)を実現した飲食店支援の「四本柱」


ーーUber Eats以降の追加支援はどういうロジックで設計したんでしょう?

宅配サービスの出前館との連携、住宅団地へのキッチンカー提供、テイクアウトを始める飲食店へのスターターキット支援。Uber Eatsを含めて、この四本柱を設計しました。

でも当初から設計していたわけではなく、市民や飲食店の声や反応を見ながら、足りない部分を補うかたちで完成させました。

まずは、出前館との連携です。これによって、Uber Eatsではカバーしきれない地域もデリバリーの対象に加えられるようになりました。また、出前館は衛生管理面をより重視されて取り組んでおられました。


(出前館のサービスの流れ。詳細はプレスリリースを参照)

ただ、それでも地域によってはデリバリーそのものに登録している飲食店が少ないエリアもありました。そんな中、ある母親からこんな電話があったんです。

「住んでいる場所がデリバリーの対象じゃないんです。小さい子供がいるけど、この状況でスーパーに連れて行くのは避けたい。なんとかしてほしい」と。

その電話で、買い物難民のような人たちがいらっしゃることに気がつきました。そこからキッチンカーのアイデアが出てきたんです。

ーーキッチンカーで買い物難民を支援すると。

徒歩圏内にスーパーのない住宅団地2カ所に派遣しました。これが非常に好評で、2週間の実施期間中、アンケートには5000人近くの方々が協力してくれました。

特にうれしかったのが、10代の女の子からもらった手紙です。「楽しくて毎日のように通いました。毎日通っていたため顔を覚えてもらい、サービスをしていただいたことも何回かあります。そのような人の優しさも、気持ちが沈む自粛期間中にはありがたいものでした。ここに住んでいてよかった」と。

「やってよかったね」と、関係者みんなで喜びました。


(住宅団地へのキッチンカー提供実験。詳細はプレスリリースを参照)

なぜキッチンカーのアイデアが浮かんできたのか。実はコロナ前から、キッチンカーを地域の賑わいづくりに活用しようという話があったんです。

かつてはニュータウンと呼ばれた郊外の住宅団地ですが、高齢化でだんだんと賑わいが失われてきていました。その打開策としてキッチンカーを利用できないかと。

この案に、都市計画課が協力してくれたことが大きかったですね。ここまでのことを、僕一人ではとてもできませんから。旧知の仲だった課長に話したら、「協力できることがあるなら!やりましょう」と賛同してくれました。

ーーコロナをきっかけとした支援策でありつつも、それ以前からあった課題に対するリーチにもなっているわけですね。

はい、この緊急事態だからこそできた面もあるでしょう。経営の苦しい飲食店が、販路を開拓しようと積極的に参加してくれましたしね。

実はこれをきっかけに、ある飲食店は自前のキッチンカーを購入されたと聞きました。withコロナの時代、来店してもらうだけでなく、自ら売りにいく。そういう方法もあるんだと可能性を感じられたのだと思います。

ーーまずは動きながら、足りない部分をどんどんカバーしてきたんですね。

そうですね。第四弾の衛生管理の啓発を含めたテイクアウトのスターターキット支援。これで穴が埋まったかなと思います。

衛生管理の啓発は地味に見えるかもしれませんが、とても大事なこと。テイクアウトが急速に増えている中で、これから夏場に向けて食中毒のリスクが高まります。

どう対策すべきか。保健所監修のもと、飲食店、配達員、購入者向けに3種類のリーフレットをつくりました。

ただ、課題はそれをどう届けるか。行政のリーフレットはなかなか見てもらえないですからね。


(衛生管理について啓発する3種のリーフレット)

ーーどうしたんでしょう?

テイクアウト用の容器とセットにして送付したんです。この容器は新たにデリバリーやテイクアウトに取り組む飲食店向けに用意したものですが、これと先ほどのリーフレットをセットで送ることで、知ってほしい情報も一緒に届けられるんじゃないかと思ったんです。


(テイクアウト用容器の支援と衛生管理に関する記者会見。詳細はプレスリリースを参照)


ーーなるほど。どの施策もROI(投資対効果)はいいんじゃないですか?

かなりいいと思います。キッチンカーによる支援では、パートナーとして連携した一般社団法人日本移動販売協会(mobimaru)が最低限の予算で運営をしてくれました。場所は市有地を使うことで予算を押さえました。運営費は1カ所100万円ほどです。

この最低限の予算で、約5000人がアンケートに協力してくれて、しかも「よかった」という回答が9割を超えました。テイクアウト容器も、とにかくスピード重視で汎用性の高いものを安く調達して、チラシと一緒にして200店に一気に配りました。

そもそも、つなぐラボの予算として実行できるものは基本的にはないんです。協力してくれる課を見つけて、予算を付けてもらう必要があります。

コロナ対応ではスピード感が大事ですが、一方で事前に庁内で根回しをしておかないと混乱してしまう恐れがある。そのあたりのバランスの取り方は難しかったですね。

そういう意味では、キッチンカーで都市計画課が協力してくれたように、関連部署がやりたいと思っていることにいかに企画をフィットさせられるか。これも大事なポイントだと思います。

公平性は?クレームは?ジレンマとの向き合い方


ーー施策を実行するうえで、どんな難しさがありましたか?

いろいろありましたよ。神戸市は、「全国初」の取り組みがけっこう多くあるんです。

Uber Eatsもそうですし、Facebookとも自治体では初めてタッグを組みました。市公式のFacebookアカウントについて効果的な運用のためにアドバイスをもらったり、事業者や商店街向けに集客のためのセミナーを開いたりしています。

「全国初」を避ける自治体は少なくないのではないでしょうか。良くも悪くも注目されますし、市民や世間からの反応がわかりませんからね。

今回のUber Eatsとの連携についても、記者発表後に市民の方からかなりの数のご意見や問い合わせがありました。

ーーどんな問い合わせがあったんでしょうか?

エリアが限定されるという公平性の問題もそうですし、そもそもUber Eatsのサービスそのものについてご理解いただけない方も一定数いらっしゃるだろうと思ってました。実際、その通りでしたね。

ただ、「苦情が来たらどうしよう」なんて考えてたら、何もできないですからね。一緒に組むパートナーの強みをしっかり理解して、自信を持って設計したプロジェクトです。そこは腹を括るしかないと。

大切なのは、市民の声を聞くこと。批判的な意見もヒントになるからです。

今回、基本的なことはコールセンターを設置して対応しましたが、お叱りや込み入った内容は私が直接聞くようにしました。長いときは1時間くらい、逆に「教えてください」という姿勢で。

コロナ対応で忙殺される中、正直大変でしたが、逃げずに一人ひとりにとことん向き合いました。

ーー企画だけでなく、コールセンター業務も兼任ですか!

目に飛び込んでくるもの、耳に入ってくる話、それらはすべてヒントになる可能性がある。そう思って常にアンテナを張っています。どう評価されているのか、SNS上でエゴサーチもかなりしましたしね。

市民との会話から足りない部分が見えてきて、実際にそこから出前館やキッチンカーなどの新しい施策につながったわけで、絶対に逃げてはいけないところだと思います。

ーー企画もそうですが、コミュニケーションにも積極的に取り組まれてるんですね。

はい、企画と広報はセットで考えるべき。今回、そう強く感じました。神戸市役所では、緊急事態宣言を受けて「広報特命班」が設置され、私もその一員として広報も兼務する体制になりました。

企画段階からアウトプットをイメージしながら進め、記者会見でも私が直接、企画者として前に立ちました。

複雑なサービスの仕組みをできるだけわかりやすく伝えることはかなり意識しましたし、企画した本人が発表するとその分思いも乗っかる。ありがたいことに、メディアにたくさん取り上げてもらい、SNSでも反響が広がりました。

緊急事態宣言下における一連の飲食店支援策では、企画だけでなく広報、庁内調整、さらに市民の声を聞く広聴。それらを一括して担ったわけです。

自分が汗をかいて調整・準備してきたプロジェクトを、自分の言葉で発表する。そして、その反応がダイレクトに返ってくる。この流れが、Uber Eatsと連携したときには構想すらしていなかった四本柱の支援につなげていったのかもしれません。

ーー今後の支援策については、どんな計画を。

Uber Eatsや出前館との施策はいったん7月で終わりますが、キッチンカーは都市計画課が中心となって第二弾を予定しています。現在、秋に実施するスケジュールで調整中です。

これから感染の第二波、三波も懸念される状況ですから、行政としては当然、そのときの状況に応じて支援策を考えていきます。


(キッチンカー提供実験のアンケート結果。詳細はこちら

私自身、まちづくりNPOの運営をはじめ様々な活動をしてますが、やはり軸はどこまでいっても神戸市職員です。

つなぐラボに配属されたときのミッションである「市民目線・地域目線」で、これからもいいプロジェクトを企画できるようにがんばります。


(文/近藤快)

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