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【教えて!】吉田さん、コロナで地方自治体は変わりますか?

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【教えて!】吉田さん、コロナで地方自治体は変わりますか?
テレワークを一気に進め、新しい生活スタイルを生み出したコロナショック。地方移住や二拠点居住への流れが加速するという見方も出てきています。ではその舞台となる地方、特にそのインフラと言える自治体はどう変わるのでしょうか? 識者に裏側を聞く【教えて!】シリーズ第二弾は、神奈川県横須賀市で8年間市長を務めた日本GR協会代表の吉田雄人さんに話をうかがいました。

【プロフィール】吉田雄人(よしだゆうと)
1975年生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、アクセンチュアにて3年弱勤務。退職後、早稲田大学大学院(政治学修士)に通いながら、2003年の横須賀市議会議員選挙に立候補し、初当選。2009年の横須賀市長選挙で初当選し、2013年に再選。2017年7月に退任するまで、完全無所属を貫いた。

現在、地域課題解決のためには良質で戦略的な官民連携手法である日本版GR:ガバメント・リレーションズが必要であるという考え方の元、一般社団法人日本GR協会を設立して現在に至る

地方自治体が直面する3つのとまどい


ーー吉田さん、今日はよろしくお願いいたします。

まず、私はいま自治体の現場にいませんので、外の目線からのお答えとなること、それと当然ですが地方自治体を一括りにはできないということ、前提としてお話しますね。

ーーコロナへの対応という前提において、自治体をどういった分類で捉えるのがよいでしょうか?

まず1つ大きな分岐は中核市(人口20万人以上の大都市)であるかどうか、ということがあります。これはイコール保健所を自身で設置しているかどうかです。裏を返すと、保健所のない自治体はそもそも感染症対策のマニュアルすら存在しないのです。

(※編集部注:中核市に加え、地域保険法第3号として例外的に5つの市で保健所を設置しています)

あとは人口密集度や夜の繁華街があるかどうか。ここは感染者の数に対して大きな別れ目です。全国1700超の自治体のうち、圧倒的に多いのが人が密集していない場所であることは前提として理解するとよいと思います。

ーーいま、自治体ではどのようなことが起きているのでしょうか?

ひと言で言うと、とまどっている。それが今の自治体の現場だと思います。

とまどいは大きく3つに分類できます。まずは、過去にないレベルの感染症という「見たこともない相手と戦う」という状況そのもの。状況は日々変わり、正解も見えない。そんな中で感染症対策も打ちつつ、かつ行政サービスを維持しなくてはいけないんです。

2つ目は、そうした状況下における多様なリクエストにどう対応するのか。一般の住民の方もいるし、事業者の方もいる。住民の中でも子育て中の方、高齢の方、それぞれ悩みも求める対応も違う。そんなみなさんが大挙して役所にかけこんでくる訳ですよ。

3つ目に、これが今回の趣旨に直結しますが、「やらなくてもいい仕事」が見えてきてるという戸惑いです。いろいろなお役所的な会議や、年間行事で決まっていたイベント。中止をしても何も問題がなかった。今までやってきたことの意味を突きつけられているんです。

業務レベルでも同じことが起きてます。ハンコや紙、対面業務などの役所的な習慣ができなくなっても、「あれ、ほぼほぼできてしまうぞ?」とみんな気付いてしまいました。これからどうなるのか、これもとまどいの一因となっています。

3兆円の地方交付金はどうなる?


ーーそうした中で、一次補正予算で1兆円、二次補正予算ではさらに2兆円積み増された巨額の「地方創生臨時交付金」が各地域に配られることになります。地方はどのようにこのお金を使っていくのでしょうか?

段階的に見るとよいと思います。

まず、一次補正予算分については、5月末に各自治体からの実施計画提出が締め切られました。スケジュールは非常にタイトで、ヒアリングを行い住民と合意形成する時間はなかったので、現金給付の政策が中心になるでしょう。

なお、この地方創生交付金については様々な批判があるのも事実ですが、私はトータルとして良い仕組みと思っています。

自治体が自分でKPIを設定してコミットするプロセスは、「議員が道路をひっぱってくれた」みたいなものとは、全く違う脳みその使われ方になりますから。


(政府は事例集を出すなどして交付金の活用を地域に促している)

ーー二次補正予算分では踏み込んだ政策も期待できますでしょうか?

ここで各自治体が知恵を使い、かつスピーディーに実行できるかは大きく差が出てくるところでしょうね。

ーーどういったところで差が出るのでしょうか?

まずは、首長のリーダーシップですね。どれだけ危機感を持って市政に臨んでいるのか。SNSはじめとして直接の情報発信ができるようになっていますし、首長の発信力の役割は大きくなってきています。発信をすれば住民の声も集まりやすく、結果として民間とのつながりが強くなります。

ーーネットでの発信はやはり重要ですか

間違いないですね。背景として、新聞折込、町内会の回覧板、防災無線など、これまで行政が活用してきたメディアがどんどん読まれなくなっていることも大きいです。

私も市長の頃にSNSを活用しましたが、住民とのダイレクトなコミュニケーションの場が生まれたということは画期的でした。それまでは「町内会の連合会のトップ」みたいな限られた人としか無かったものが外に開かれたので。

ここ数年で行政でも課単位でSNSアカウントを持つとか、発信のマニュアルを整備をするといったことが進みました。またネットの活用が業務のスピードUPにもつながる事例も出てきています。

例えば道路に亀裂があったとして、それまでは住民→町内会→町内会連合会→議員みたいな形で時間をかけて処理されていたものが、住民が写真をとってダイレクトに行政に報告して修理につながるなど。

ネット活用の流れにコロナは追い風ですし、その重要度はさらに加速しています。

ーー首長の危機感やリーダーシップの他にポイントはありますか?

実行にうつすための「柔らか頭」の職員も重要です。私の感覚では全体の1-2割はどこでもそうした人はいるんですが、ポイントは、たとえば財政や企画、人事といった要職にそうした人が就いているかですね。

リーダーシップのある首長、そこに柔らか頭の職員がいるところは、結局平時からしっかり住民とコミュニケーションができているので、結果として大胆な政策が生まれていくんです。

現金給付のような政策は、誰も嫌がらないものです。一方、賛否が分かれるような政策にこそイノベーションがあると考えています。

ーーたとえばどんな自治体が良い事例でしょうか?

SNSで強い発信力が注目されている熊谷市長の千葉市は、感染クラスター発生を公表したお店などに100万円を支払う独自の政策を展開していますね。


(吉田さんのGR協会では、自治体による特徴的なコロナ対策をサイトで公開している)

元に戻ろうとする強い力の中で何をすべきか


ーーそもそもですが、地方自治体において政策はどういったプロセスで決まっていくのでしょうか。

企画があり、予算がついて、実行にうつるという「プロセス」は一つですが、その「トリガー」がどこにあるかがポイントになります。大きくは3つで、首長のトップダウンか、自治会や商工会のような組織や議員など外部から提案がくるか、現場からあがるか、に分かれます。

現場からのパターンは住民の声をちゃんと聞けている、別の言い方をすると官民の連携が進んでいると、前に進みます。担当部署の課長から部長、そこから財政課、市長へとあがっていくのですが、そこで市長がNOというケースはあまりありません。

外部からのパターンも結局はプロセスは一緒なので、やっぱり鍵を握るのは、首長のリーダーシップと柔らか頭の現場職員なんですよね。

ーーその過程で、ジレンマみたいなものがある気がするのですが

状況にあわせて事業を取捨選択しなくてはいけないのに、一方で前年までのサービスレベルから下げづらい、というところですね。奥さんに贈る薔薇の本数みたいなものです。去年10本だったのに何故今年は5本なの!?みたいな(笑)。

予算は有限なので総合的な判断で減らさざるを得ないこともあるのですが、なかなか理解してもらえません。

さらに背景として、住民の多様化が進んでいるので新しいニーズが増えている。首長や議員は新しいことが好きなのでやりたがるけど、既存の事業はどうするんだ?という板挟みにあうことは日常です。

ーーそこをどう乗り越えるのでしょうか?

まずは住民の方に伝え続け、理解していただくことです。例えば「財政はきびしい」という一言ではなく、具体的な数字でしめす。そして対話の機会をつくる。

それと、制約条件の中でもうまくやる方法はあるんです。

たとえば、老朽化した市営住宅が3つあるとします。3つ全てを耐震工事してリフォームかけて、とやったら莫大な予算がかかります。でも2つ売却して、それを原資にして残りの1つの場所で新築する。それも、一人暮らしの増加状況にあわせて1戸あたりの面積を減らしつつ戸数を増やしたり、高齢化に合わせてエレベーターを設置したりすることで、ニーズに対応できるわけです。

こうしたことを考え、実行するのが柔らか頭の職員なんです。でも、役所の職員だけでできることには限界がありますから、市営住宅の物件管理は民間がやるなどの連携が進むとさらによい市政になっていくと思います。

ーー民間との連携とはどういうことでしょうか?

今回コロナ対応では、LINEを活用した自治体がいくつもありましたよね、これは分かりやすい事例です。AIをつかった自動応答チャットシステムという、LINEのプラットフォームと技術をつかって住民一人ひとりとの会話を実現しました。行政では持っていないリソースを民間が補うのです。

ーー官民連携という言葉はよく聞きますが、そのために何が大切なのでしょうか?

まずは民間側が、行政側の課題と、その仕事スタイルを理解することです。スケジュール感や予算の使い方などは民間とはまったく違います。でもここを乗り越えると、よい連携につながっていきます。

それと、首長だけではなく現場職員とつながることも意識すると良いと思います。該当部署で3人くらいを目安にするといいと思います。人事異動もありますし、そこからキーとなる人をたぐり寄せることができますので。

ーー民から動くことが大切なんですね

大前提として、これからすごい勢いで「元に戻ろう」という圧力がかかると思います。社会全体もそうですし、特に自治体においてはなおさらです。戻るべきものはもちろん戻るべきですが、今回せっかく見えた良い変化すらも無かったことになってしまう恐れがあります。

ハンコがなくても、わざわざ役所に行かなくても、ことは進むんです。細かいところですが、こうしたことから変えていくべきでしょう。行政側に変われと求めるだけではなかなか変わりませんので、私は民間が動くことが鍵になると思っています。

ーー無駄に役所に行かなくて済むようになるのは、とてもいいですね

役所の人って、もう無意識に「じゃあ来てください」って言っちゃうんです。悪気はないんです。ここが変わるだけで確かな一歩ですよ。

ーーそれひとつとって、民間側にメリットありますね

行政はどうしても批判の対象だったりスケープゴート的に扱われますから、まずは1つひとつの細かい変化を褒めてあげるだけで意味があります。そこから始めて、その先に理解や協働につながっていってほしいです。

今回、東京一極集中がどれだけリスクかが可視化されたとも言えます。今後ウィルスの第二波のリスクもある中で、人々のライフスタイル、地方での生活が見直される流れは間違いありません。

今が変わるチャンスです。ぜひ民間も一緒になって、よい変化を起こしていってもらいたいです。

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